果実レイチ

その手にあるものを捨てろ
本も紙も筆も何もいらない
その何もない手で視界を塞げ
そうしてみえるものがお前だ
それをじっくりみつめろ
ひな壇の上に並べられた文章も
デフォルメされた自身をゆめみる詩も
その眼球では三文の価値しか見出せないんだ
そんなものは投げ捨ててお前自身をよくみろ
それを形になんてしなくていい
それを記憶になんてしなくていい
そうする必要のあるものは三文の価値すらないんだ
手の肌が溶けてお前の視界に滲んだとき
透明になった手から世界を透かして見ろ
そこからみえる世界にお前は生きている
その世界は形にするんだ
その世界は記憶にするんだ
眼球のなかで 脳味噌のなかでみたものは
そのうち汚物と化すただの幻覚であって
暗闇のなかで 子宮のなかで ひとりでみたものは
光のなかへ子供として産んではいけない
そうなるまえに母なるその手でそいつを
記憶としてその手に産みおとすんだ
その子の泣き叫ぶ声が 涙が
血となり眼球につたい
そこから赤い涙として流れたとき
真っ赤な手でその眼球を取り出せ
真っ赤な手でその脳味噌を取り出せ
そうして見える世界を目の前の壁に真っ赤な血でかけばいい
それがお前の物語だ
それがお前の詩だ
本も紙も筆も眼球も脳味噌も子宮も闇も孤独もそこから得るそこでみる光景は想像は妄想はお前の物語でもお前の詩でもないお前自身ですらない
お前の物語は壁に乗せられた血だよ
お前の詩はお前の目だよ。
ほら、何もなくても
お前はちゃんと此処にいる。