DRINK ME

 髪の毛をつかまれ
 浴槽に放り出される

 熱湯が溢れていく
 あまりの熱さで溶け出しそうで。

 何のために足があるのか
 何のために手があるのか
 何のために頭があるのか
 身体はとっくにのぼせていて、くしゃくしゃな髪の毛もじんじんと痛む頭皮も真っ赤に火照る肌の事も忘れて眠りにつく。
 ヒトというのはとても不便だ。

 眼が覚めたらね、きっと真新しいお洋服を着せてもらえると思うんだ。
 そのお洋服が似合うように、にこにこしていなくちゃいけない。
 だから今のうちに夢を見ておくね、すっごく幸せな夢。
 何度見ても飽きない、何度見てもどきどきする、そんな夢。

 身体はとっくに硬くなり始めていて、関節は丸くなって腕も足も頭も腰も細く整えられ胸は誰かの期待で大きく膨らんでいく。
 人形というのはとても便利だ。

 蒸気で部屋が真っ白。
 身体はどろどろに溶けていく、人形のように美しくなるために。

 浴場の中に私だけ取り残される。
 透明なガラスに映った自分をぼんやりと目に映す。
 からっぽの瓶の中みたい、だね。
 きっちりと閉められた蓋は、私にはとても動かせそうに無いから
 誰かに開けてもらわないと、どんどん埃が被って、つもり積もってその重さで割れそうで
 だから、開けてくれる人がいるから、しあわせ、だ よ  。

 からっぽな瓶
 軽いことはとても幸い
 いつか海に捨てられて、どこかの浜に打ちあがれ
 いつか投げ捨てられて、どこかの空に打ちあがれ